日本ジャルキャ・ヒマール登山隊2020

隊長 竹中雅幸

登山報告

#日本ジャルキャヒマール登山隊2020

 

残念ながら登頂とはなりませんでした。

 

3/19、標高4500m地点にベースキャンプ設営。

雪が多くBCの標高が当初の予定より低く、山からも遠くなり、氷河への取り付きも不明瞭であったことから、当初予定していたヒンドゥーヒマール方面での順応をとりやめ、偵察と順応をかねて前進していく方針に変更。

複雑な地形に驚きながらも、3/26には標高5000mにキャンプ1を設置。翌日には氷河を間近に望む5300mのキャンプ2候補地を選び、いったん下山しました。

3週間の登山期間を用意していたものの、時間が過ぎるのは驚くほどはやく、2日間の休養をはさんだ3/31、最初で最後のチャンスにかけて出発。翌4/1には予定通りジャルキャヒマールから流れ出る氷河を正面に望むキャンプ2に入りました。

今回のテーマのひとつが、ヒマラヤ登山では避けては通れない氷河を体験したいというものでした。

氷河の登攀では雪の集まる地形を通過するため、雪の翌日は雪崩を警戒して待機し、雪が安定してから登りたいという考えで、2日間の晴れが欲しいということを考えていました。

しかし、午前中は快晴であっても、昼を過ぎると雪がちらつきだし、夜は強風とトレースをかき消す降雪の日々。

食料を節約し、予備日を使ってキャンプ23泊待ちましたが、チャンスが訪れることはありませんでした。

またキャンプ2滞在中に高山病の症状が見られたメンバーもおり、隊をわけることも考えましたが3名の小さなチームでは現実的ではなく、4/4早朝、下山を決定し、4/5にベースキャンプに全員無事帰着しました。

最高到達地点は、キャンプ2での停滞中に氷河の偵察を行った5400mまでとなりました。

 

現在は最奥のサムド村まで下山し、ネパール政府のロックダウン(移動制限)の影響を受けて待機の日々を過ごしています。帰国は大幅に遅れることが予想され、コロナウイルスの世界的な猛威に驚いています。

 

よく退く勇気といいますが、直接的には天候のため、突っ込むことすらできずに終わっており、せめて技術的核心部である氷河にひと振りでもアックスを打ち込んでみたかったという悔しいような、むなしいような、表現しづらい感情でいっぱいです。

その一方で、自分の目で山を見て、雪を見て、5400mまで前進することができ、やればできるじゃないか自分というような、まだまだやれるなという前向きな手応えを得ることもできました。

いまだ気持ちの整理はついていませんが、少なくともここに至るまで、日常生活では得難い多くの経験ができたという自負もあり、山は登れなかったけれども、それだけでこの遠征の価値がなくなるとは思っていません。

無事に帰国し、報告をまとめるまでまだ旅は終わりませんが、ひとまずいまの気持ちをここに書き残しておきたいと思います。

 

応援していただいた皆さま、本当にありがとうございました。 

 

2020年4月13日 日本ジャルキャヒマール登山隊2020 隊長 竹中雅幸

 

 

【カトマンズに帰ってきました!】 =竹中雅幸 Facebookから転載= 2020/4/26

 

帰国予定日が過ぎる中でご心配おかけしております。

ネパールはいまだロックダウン(外出禁止)の最中ですが、なんとか移動許可を取得し、昨日4/25深夜に首都カトマンズに帰着しました。

移動の疲れはありますが、メンバーは皆元気にしております。

 

報道の通り、ネパール政府は国際線の運航停止を5/15まで延長することを決定しました。したがって、帰国は早くとも5月下旬になることが予想されます。

帰国後も2週間の経過観察が必要と聞いていますので、なにかしらの活動再開ができるのは現時点では6月以降になるかと思います。あくまでいまのところは、ですが……

 

今のカトマンズは、朝と夕方のごく短時間のみ外出が許されています。私たちは今朝、エージェントの事務所からタメル地区のホテルへと移動してきたところです。

長期戦のため節約生活ではありますが、まずは当面の拠点ができたことにほっとしています。

 

日本でも外出の自粛状態が続いていると聞きました。また登山の様子など、ご紹介していきますので、写真だけでもお楽しみいただければと思います。

 

 

というわけで、元気です!



竹中隊長からの登山通信

GARMINインリーチ・ミニによる衛星通信から位置情報付きメッセージ


ジャルキャ・ヒマール登山計画

                                                     

2016年 、日本山岳会関西支部設立 80 周年記念行事として実施された東ネパール 未踏峰 ・ナンガマリ 2 峰( 6 ,209m )登山の中からこの計画は生まれました。

ナンガマリ登山で学んだ「1 枚の地図から想像し、仲間とともに登山を創りあげていくこと」を実践できる場所 を探し求めて 、これまで極西ネパールの偵察トレッキング や 、 あるいは 辺境部や未踏峰リストの勉強会などを行ってきました。

このたび、ネパールヒマラヤ・マナスル山群の北方、チベットとの国境線に位置するJarkyaHimalを舞台として、

(1)未踏峰Jarkya Himal 6,473m )の初登頂

(2)少人数小規模登山隊によるアルパインスタイル登山の実践

を目的とした登山を行います。

 

現地エージェントとの事前交渉、ベースキャンプまでのキャラバン 手配 などを可能な限り自分たちの手で行うことで、小規模登山隊らしい「手づくりの登山」を実践したいと考えています。

ヒマラヤは広く、そこには無数の山々が待っています。言葉にすると当たり前のことではありますが、そこには先鋭的な登山ではなくとも、日本での登山の延長で、身の丈にあったパイオニアワークを実践する余地があるということだと思います。

まずは行動に移し、憧れの高みへのステップを踏み出すこと が、これからにつながっていくと信じています。 ご支援ご鞭撻 の程 、 よろしくお願い申し上げます 。

 

1.隊の名称

日本 ジャルキャ・ヒマール 登山隊 2020

Japan Jarkya Himal Expedition 2020

 

2.目 的 

(1)未踏峰 Jarkya Himal 6 ,473 m の初登頂

(2)少人数小規模登山隊によるアルパインスタイル登山の実践

 

3.期 間 

2020 年 プレ モンスーン( 3 月 上 旬~ 4 月 下 旬) 約 50 日間

 

4.目標の山・タクティクスについて

今回目指す Jarkya Himal (または Jarkya Peak 6 ,473m は、ネパール政府が 2014 年に解禁した104 座のうちのひとつです。日本人が初登頂した 8 ,000m 峰として名高い Manaslu を望みながら周遊するトレッキングコース、通称“マナスル・サーキット”がキャラバンルートとなります。 The Himalayan Database をもとに 100 座をこえる未踏峰を精査した結果、山容、キャラバン日数、高度順応のしやすさなどからこの山を選びました。

標高約 3 ,900m のサムド村からマナスル・サーキットを外れ、標高 4 ,800m 付近にベース キャンプを設営。その後、既に情報のある BC 西側の雪尾根をたどり Hindu Himal 6,304m 付近で高度順応を行った後、 Jarkya Himal から流れ出す Hindu 氷河からの登頂を目指します。高度順応と氷河の攻略が鍵と予想しています。

 

5.登山隊員

(1)竹中雅幸 30 歳 (隊長/通信/渉外)

      日本山岳会関西支部(正会員)

      京都府立大学山岳会所属

 

(2)平正彦 40 歳 (登攀リーダ/装備/保険/会計)

      日本山岳会関西支部(準会員)

 

(3)立野里織 43 歳 (医療/食料/輸送)

      日本山岳会関西支部(正会員)

         

引用:日本ジャルキャ・ヒマール登山隊2020計画書

概念図 ジャルキャ・ヒマール6473m